日本の携帯電話料金、やはり世界と比べると高かった。最大格差はパリの4.2倍。値下がり率は世界最悪。
2018年8月21日、菅官房長官の「携帯電話料金は他国に比べ高すぎる。4割は値下げの余地がある」と発言し、
波紋を呼んでいますが、「世界と比べて言うほど高くないよね,、MVNOやサブブランド潰しだよね(itmedia紙)」、
や
「携帯料金は4割下げる余地がある」菅官房長官の発言はどれだけバカなのか検証してみた – ライブドアニュース
などなど反論する記事もありましたが、この度総務省が平成30年9月19日、
電気通信サービスに係る内外価格差調査ということで、毎年発表している諸外国と我が国の
電気通信サービス(携帯電話料金、光ファイバー料金)の比較資料を改めて報道発表したのでご紹介。
一概に結論付けるのは非常に難しい内容となっています。
比較1:ワイモバイル 2GB
スマートフォンユーザA(音声月 70 分・メール月 155 通・データ月2GB) の比較です。
いきなり比較対象がソフトバンクのサブブランドのワイモバイル設定かよ・・・ということで、
恣意的に日本が安くなるような比較を行っていると見られてもおかしくないかも。
ただ、他国の携帯電話プランには管理人は詳しくないので、諸外国もサブブランド扱いのプランであれば、
ある程度公平な比較かも。
東京はニューヨーク、ソウルに続いて3位の値段の高さです。
スマートフォンユーザB(音声月 70 分・メール月 155 通・データ月5GB) の比較も、
ワイモバイル設定で東京は3位です。
比較2:au by KDDI 20GB
スマートフォンユーザC(音声月 70 分・メール月 155 通・データ月 20GB) の比較です。
東京1位、ニューヨーク2位、デュッセルドルフ(ドイツ)3位となっています。
上記のItmedia紙は
菅官房長官がズルいのは、あえて20GBプランだけを引き合いに出し「日本は高い」と主張しているのだ。
と書いていますが、むしろワイモバイルを比較表に入れ込む方がズルい。
20GBもちゃんと比較しないほうがおかしいでしょう。
確かにitmedia紙の記事はKDDIの広告が全面に表示されているから、忖度しているのでしょうね。
誰も広告主のことを悪くは言えない世の中です。
比較3:シェアNO1のドコモ2GB、5GB、20GB
ちなみに、諸外国のシェアNo1のキャリアで比較した表は次の通り。
2GBでニューヨーク、東京、デュッセルドルフの順。
5GBでぶっちぎりで東京、ニューヨーク、ソウルの順。
20GBで東京、ニューヨーク、ソウルの順。
最安値のパリ1783円と比べると、東京は7562円、実に4.2倍となります。
とはいえ、ここの差を取り出して見出しにするのはちょっと酷かも。
携帯料金、東京が「世界最高」…パリの4・2倍 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
ここまで見ると、「やっぱり東京高いなぁ」と思うのですが、結論はまだ早い。
比較4:シェアNo1の端末割賦代金一体型料金プランの比較
事実上、通信料金と端末割賦代金が一体となった料金プランが各キャリアの販売の前提ですので、
端末はiPhone8(64GB)とし、比較を行っています。
スマートフォンユーザA(音声月 70 分・メール月 155 通・データ月2GB)
ニューヨーク>ソウル>ロンドン>東京の順番です。
5GBの場合はソウル>ニューヨーク>東京の順番です。
20GBの場合はニューヨーク>ソウル>東京の順番です。
比較5:シェアNo1のキャリアで家族4人で利用した1人あたりの比較:
スマートフォンユーザA(音声月 70 分・メール月 155 通・データ月2GB) での比較です。
はい、東京がぶっちぎりでNO1。
5GBでも東京、20GBに至っては東京9317に対して、2位のソウル5521とダブルスコア近い数字に。
比較6:料金の値下がり率:
2GB | 5GB | 20GB | |
東京 | 82% | 88% | 100% |
ニューヨーク | 58% | 42% | 91% |
ロンドン | 33% | 29% | 118% |
パリ | 29% | 26% | 110% |
デュッセルドルフ | 41% | 29% | 128% |
ソウル | 73% | 72% | 92% |
※各国シェアNo1のキャリアプランの比較。
※2GB、5GBは平成26年度~平成29年度
※20GBは平成28年年度~平成29年度
という訳で、20GBを除くと、2GBと5GBは日本が世界で一番料金プランが高止まりしている国である、
と言えるでしょう。とは言うものの、20GBは諸外国が値上がりしているものの、我が国は横ばい、
ニューヨークとソウルは値下がりですし、一概には言えません。
ただ、20GBプランは登場してから日が浅いので、他国の値下げトレンドを見ると、今後数年で
値下がりが予測されます。
結論:我が国は十分に高いものの、世界一高いとは言いづらい。
結論が言いづらい調査結果ですが、少なくともシェアNO1のキャリア(ドコモ)においては、
世界標準と比べて高水準であるものの、世界一高いとは言いづらい結果となりました。
ドコモで家族4人で利用した1人あたりの比較は、ぶっちぎりのNo1ですけどね。
なお、総務省はMVNOの料金プラン比較も行っており、日本は概ね2~3位をウロウロしている程度です。
つまり、菅官房長官の「携帯電話料金は他国に比べ高すぎる。4割は値下げの余地がある」と発言は、
多少間違っていると言えるでしょう。
正しくは、「携帯電話料金は他国に比べ十分に高い水準に有る。何割かは値下げの余地がある。
家族で使う料金は高すぎる。
また2GBと5GBという、利用者が一番使うであろうプランの値下がり率は諸外国において最悪だ」
となるでしょう。
いや、言うほど間違ってねーだろと思う方、その方の見方もきっと正解です。
という訳で、監督省庁の総務省に、今後の活躍を期待します。
ITメディアもBUZZAP!も、スマホや携帯関連の市場が縮小してしまうと食い扶持が減ってしまいますから必死ですよ。それ以前に、ITメディアはソフトバンクが過半数を握っているメディアですから反対するのは当然です。
通信環境はどうなんかな?
例えるなら、日本の水道水は高い!パリに合わせる!って言われて価格も品質もあわせていいの?
電力料金も大規模災害時の復帰速度や電気の品質なんかも比べて言ってほしい。
そのへんはお国柄がありますからね・・・総務省も「なお、電気通信サービスに係る料金については、各国とも通常料金・割引料金の別をはじめ、様々な体系が存在します。また、利用形態により要する料金が異なること、同一国内でも地域間格差があり得ることなどに留意が必要です。したがって、本調査結果は指標の1つとして捉えることが適当です。」と言っています。
それを言い出すと「日本は税金が高い!けど治安もいいし国民皆保険だし水は美味しいから別にいいんだ」とか議論が発散しますので、あくまでも比較の尺度の一つとしてどうぞ、ということでしょう。